19,20班 「脳死判定における脳幹反射について」
1.脳死とは何か
2.脳幹反射
a.対光反射・角膜反射・毛様体脊髄反射
b.前庭反射・眼球頭反射
c.咽頭反射・咳反射
1.脳死とは何か
現在日本における臓器移植法は、脳死とは全脳死(大脳,小脳,脳幹を含む全脳髄の不可逆的な機能停止)のことを言い、イギリスなどが脳死と定める脳幹死とは立場を異にしている。脳幹とは、間脳、中脳、橋、延髄から構成されており、呼吸中枢である他、人間の生命維持に必要な、無意識的な働きの中枢である。また意識を覚醒状態に保っている働きを持っている。脳死と植物状態とを混同しがちであるが、脳死は植物状態とは異なる。後者は大脳は機能廃絶していても,脳幹部は健常であり昏睡状態であっても栄養さえ補給すれば生きながらえる状態にある。つまり、脳死は自力で呼吸できないので人工呼吸気で呼吸させられているが、植物状態では患者が自発的に呼吸し、人工呼吸器等は不要である。また、植� ��状態の患者は栄養さえ補給すれば生き永らえるが、脳死者は人工呼吸器を用いたとしても2〜3日で50%,一週間で70〜80%が心停止に至る。
脳死判定について
脳死判定は脳外科医など移植医療と無関係な2名以上の医師による.脳死判定は6時間の間をあけて2回行う。
1〜5の項目を完全に満たすことが必須である。
深昏睡
顔面もしくは眼窩切痕部を刺激する。刺激に対し覚醒せず、痛みに対し反応せず、開眼・発語・運動機能なしの状態を指す。Japan Coma Scal (JCS)300, Glasgow Come Scale(GCS)3でなければならない。
瞳孔固定
瞳孔径が左右とも4mm以上で固定して光に反応しない。
脳幹反射の消失
以下の1つでも反射が残っていれば脳死とはいえない。
・対光反射
左右の瞳孔に各々十分な明るさの照明光を入射しても縮瞳がない。
・角膜反射
綿球または綿棒にて眼球角膜部に触れても瞬目しない。
・毛様体脊髄反射
頚部附近に疼痛刺激を加えても両眼の瞳孔散大が見られない。
・眼球頭反射
頭部を受動的に急速に上下左右に回転しても,眼球の運動方向と逆方向への偏位が見られない。
・前庭反射
頭部を挙上し外耳道に冷水50ml以上注入しても眼球の刺激側への偏位がない.鼓膜損傷の場合は施行しない。
・咽頭反射
咽頭後壁を刺激しても咽頭筋が収縮しない。
・咳嗽反射
気管を刺激しても咳反射が起こらない。
平坦脳波
定められた技術基準にて最低4導出で30分以上の記録で脳波が平坦.記録中に感度を4倍以上にあげ最低3分間の記録を行う.大声での呼名,音刺激や強い痛み刺激での脳波の反応も記録する.
自発呼吸の消失
無呼吸テストを行い,自発呼吸の全くみられないことを確認する.
検査前に100%酸素にて10分間人工呼吸し,動脈血炭酸ガス分圧が基準値の範囲(35mmHg以上45mmHg以下)であることを確認,ついで10分間程度まで人工呼吸を中止する.この間6l/分の100%酸素を気管内チューブを介して流す.判定は血液ガス分析にて動脈血炭酸ガス分圧が60mmHg以上に上昇したことを確認する.陽性と判断されれば直ちに人工呼吸を再開する.低血圧や不整脈に留意し,検査を継続する危険性の生じた際には直ちに中止,判定不能とする.
努力目標(必須ではないが望ましい)として聴性脳幹誘発反応
判定は6時間置いて二回行い,二回目の検査終了時を死亡時刻とする.
2.脳幹反射
a.対光反射・角膜反射・毛様体脊髄反射
時アームオーデルで起動ん。
○眼球の構造
眼球は直径約25mmの中空な球形をしており、外膜・中膜・内膜の3つの層からなっている。
・外膜
外膜は線維性の丈夫な膜で眼球の形を保つ役割をしている。外膜はさらに角膜と呼ばれる透明で外界に接した部分と、強膜と呼ばれる頑丈な白色の部分に別れている。この強膜には眼球を動かす筋肉が着いていて、この筋肉の働きにより目を動かすことができる。
・中膜
中膜は血管の豊富な3つの部分(脈絡膜・網様体・虹彩)からなっている。脈絡膜は色素に富んだ黒い組織で眼球へ血液を運ぶ血管が豊富である。
毛様体は水晶体の形を変えることのできる筋肉と水晶体が付着している網様突起からなっている。
虹彩は毛様体の前方に連なり、角膜の後方にある円板状の膜で、その中央部には円形 の空間があり、これを瞳孔という。色は、日本人では黒褐色をしているが、人種により異なる。虹彩には瞳孔を大きくするために放射線状に走る瞳孔散大筋と、瞳孔を小さくするために輪状に走る瞳孔括約筋とが存在する。瞳孔括約筋は副交感神経で支配され、収縮すると瞳孔は縮小する。瞳孔散大筋は交感神経で支配され、収縮すると瞳孔は拡張する。
・内膜
内膜は網膜である。網膜は眼球壁の一番内層で、眼球の主要部分をなし、写真機でいえばフィルムに相当する感光膜である。網膜の中心にあたる部分を中心窩といい、それを取りまくやや黄 色を帯びた円形の部分を黄斑という。網膜中の神経線維が集まって眼球外へ出ていく 部分を視神経乳頭といい、中心窩より約3mm鼻側にある。網膜には杆体と錐体という二種類の光を感じる細胞がある。
・眼球の内容
眼球の内容は水晶体、硝子体、眼房水である。眼球の内容は透過性で、角膜とともに眼球の通光路であり、光学的屈折系となっている。眼球に入る光は、まず角膜で最も強く屈折し、ついで水晶体で屈折し、硝子体を通過して網膜に達し、ここで像を結ぶ。
○瞳孔の光量調節メカニズム
瞳孔は、網膜に達する入射光量を調節する。瞳孔の直径は2〜8mmの範囲で変化し、入射光量の最小と最大時の比は16倍に達する。この比は、明・暗順応時の視物質量の比よりはるかに小さいが、変化が速いので強すぎる光に対して網膜を保護する。瞳孔の大きさは虹彩の瞳孔括約筋と瞳孔散大筋で調節される。瞳孔縮小は、瞳孔括約筋の収縮による。毛様体神経節に発し動眼神経を通る副交感神経がコリン作動性(ムスカリン作用)に収縮させる。瞳孔散大筋は交感神経のアドレナリン作動性神経で支配される。瞳孔散大は痛覚刺激や精神的刺激(恐怖、不安など)による交感神経の興奮で生ずる。
対光反射
発光装置などを用いて眼の近くから光の小束を一眼に入射させるとき、両眼に反射的な瞳孔縮小(すなわち共感性対光反射)が起きる。視索線維は外側膝状体で終わっているが、視索線維のうち約1%は、外側膝状体に達する直前に向きを転じて中脳の視蓋前核に終わる。この核から始まる短いニューロンが副交感性のエディンガー・ウェストファル核Edinger-Westphal nucleusに達していて、このニューロンが光刺激に応じた瞳孔括約筋収縮信号を自動的に出すので、その結果縮瞳がもたらされる。これが対光反射である。対光反射には、光が当たった瞳孔が収縮する直接反射と、反対側の動向が収縮する交感性反射とがある。対光反射の求心路は視神経を通り、上丘腕を経由して視蓋前域に到達したのち、視蓋前域からの情報が両側の動眼神経副核に至り、網様体神経節で中継している。網様体神経節の細胞の軸索は、短毛様体神経を通って眼球にはいり、瞳孔括約筋に達する。一眼からの光刺激が両眼の縮瞳反射を起こす道筋には、以下の3通りが考えられる。
1.光を受けた眼球の鼻側半網膜からの線維が視神経交叉経由で、反対側の視蓋前核に達する。
2.左右の視蓋前核をつなぐ交連ニューロン(その線維が後交連を通過)が存在するので、一側核に達した刺激は反対核へも容易に伝達される。
3.右または左視蓋前核から発し左右のエディンガー・ウェストファル核に至る神経路が存在する。
フロスは歯が緩んで行います
補足:暗いところで、瞳孔が大きくなる反射経路は複雑である。求心路は視神経を経て、網様脊髄中枢とよばれる。第一胸髄の中間外側核に到達する。ここから、第一胸神経を通って交感神経管に入り、上頚神経節で中継する。上頚神経節を構成する神経細胞の軸索は、長毛様体神経を通って眼球に入り、瞳孔散大筋に終止している。
角膜反射
角膜が刺激されると外輪筋が収縮して眼が閉じる。この効果は同側の顔面神経核への伝達インパルスに基づく。したがって、三叉神経感覚核群から出るインパルスが顔面神経核に投射しているのは明らかである。眼神経を損傷すると同側の角膜の触覚と痛覚が消失するが、この場合でも反射弓の出力部が健常であれば、反対側の角膜の刺激によって両眼が閉じる。しかし顔面神経が損傷されると、角膜の感覚は健常であっても角膜反射は障害される。
求心性神経は角膜→長毛様体神経→毛様体神経節を通過して鼻毛様体神経に加わる→眼神経→三叉神経、遠心性神経は顔面神経である。綿球または綿捧の先端をよって細くしたものを眼球角膜部に触れると、瞬目する反射である。顔面神経麻痺その他で閉眼不能の状態が続いていた場合や、コンタクトレンズで角膜表面が障害されている場合などには、脳死でなくても消失することがあるので注意を要する。
毛様脊髄反射
毛様脊髄反射の明確な機序は、実際にはよくわかっていない。しかし、瞳孔散大筋が毛様体脊髄中枢から交感神経性支配を受けていることはわかっている。したがって、次のように考えることができる。
頚膨大部の尾側レベル(C7-T1)、または胸髄上部(C8-T2)の交感神経細胞から起こる節前線維は交感神経管を上行して上頚神経節に達してシナプス結合する。節後線維は内頚動脈壁の神経叢を通り毛様体神経節に達する。ここではシナプス結合せずに通過して、毛様体神経節から出る短毛様体神経とともに長毛様体神経として視神経の付近で眼球に入り、強膜を貫いて、これと脈絡膜の間を前にすすみ、交感性線維として瞳孔散大筋にはたらくと考えられる。
毛様脊髄反射の問題点:
脳死判定基準には次のような記述がある。
本判定指針では、深昏睡を外的刺激に対する無反応と定義したが、いわゆる脊髄反射はあってもさしつかえない。したがって深部反射、腹壁反射、足底反射などは消失しなくてもよい。脳死で脊髄反射が存在してもよいという考えは、多くの判定基準で認められている。
毛様脊髄反射とは、すでに述べたように、頸部付近をつねるか針で疼痛刺激を加えると、両側の瞳孔散大が起こる反射である。この反射が消失している場合には下部脳幹の障害を意味する。しかしながら、以下の論文では、脳死状態であると認められながら毛様脊髄反射が見られるため、毛様脊髄反射による脳死判定には注意を要するということが述べられている。
************************以下は論文の抜粋である***************************
脳死判定における毛様脊髄反射の意義 毛様脊髄反射のみ陽性を示した2例
Author
池田尚人(昭和大学 救急医), 有賀徹, 林宗貴, 三宅康之, 杉本勝彦, 松本清
Source
脳と神経(0006-8969)51巻2号 Page161-166(1999.02)
Abstract
病態の推移から臨床的に脳死に至ったと考えられた症例で毛様体脊髄反射陽性であった2例。症例1は右被殼出血による脳ヘルニア、症例2は転落により頸髄損傷,蘇生後脳症を伴う重症頭部外傷である。いずれも臨床経過,頭部CT所見より脳死状態と推測されたが毛様体脊髄反射は陽性であった。毛様体脊髄反射の反射中枢は上部胸髄にあるために顔面への痛み刺激では脳幹を経由するが、顔面頭部より以下の刺激では脳幹を経由しない。このように同反射は,脳幹を経由する経路としない経路の二つが考えられるため、検査方法によっては脳幹機能の評価に適切でない場合がある。毛様体脊髄反射が脳死判定に適切であるか否かの問題も含め、検査方法或いは実施上の注意点の再検討が必要と考えられた。
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b.前庭反射・眼球頭反射
眼球頭位反射…人形の目現象ともいう。外眼筋麻痺のない場合に、頭を受動的に急速に、
左右上下に回転すると、眼球が運動方向と逆方向に偏位する。脳死では、
この反射が消失する。
低テストステロンの原因は何ですか
前庭動眼反射…温度試験ともいう。頭部を30度挙上し、カテーテルで外耳道に冷水を50ml
以上注入すると、意識障害があっても脳幹機能が保たれている場合は、眼球
が刺激側に偏位する。脳死ではこの反射が消失する。
この2つの反射における求心性神経は前庭神経(内耳神経の1つ)で、遠心性神経は動眼神経・滑車神経・外転神経である。
まず、頭を急速に左右に回転させたり、外耳道に冷水を入れたりして起こった前庭器での興奮は、三半規管膨大部や、卵形嚢・球形嚢の神経上皮で感じ取られ、前庭神経をたどって、橋の前庭神経核に伝えられる。ここから出る第2次ニューロンは3つある。
@脊髄を下行して、運動ニューロンに接続するもの
A小脳核に接続するもの
B動眼神経核・滑車神経核・外転神経核に接続するもの
これらのうち、@は姿勢反射に関与し、Aは頭が体幹に対してどういう位置にあるのかを知るための経路であり、眼球頭位反射と前庭動眼反射を制御している。Bは外眼筋による眼球運動を司るものである。
このように小脳の監視下で、前庭神経核に伝えられた興奮は、それぞれの核の間を走る内側縦束を伝わり、運動ニューロンを興奮させる。すると、右に頭を回転させた場合は、左眼が外転・右眼が内転し、眼球は左向きになる。これが、眼球頭位反射である。
また前庭反射において、頭を回転させずに、右の外耳道に冷水を入れた場合は、右側に眼球が回転し、左向きの眼振が起こる。これは、温度刺激によってリンパ液の流れる向きが変わり、刺激側の前庭器が抑制されるために、反対側の前庭器の情報が伝わることによって起こると考えられる。
反射経路
脳幹反射の中で前庭器官が関与する反射は、眼球頭反射と前庭反射の二つがあります。眼球頭反射は、頭を急に動かすと眼球がそれとは反対方向に移動する反射で、前庭反射とは、耳から冷水を入れると眼球が刺激側に偏位する反射です。この二つの反射の特徴は、前庭器官への刺激が、眼球の運動に現れることです。そして、この反射には眼振が関わっています。
眼球運動の目的は、眼球の方向を対象物体に対して一定に保ち、興味ある対象を細かい物を識別できる中心かに向けることです。そのために眼球頭反射では、頭の回転運動によって生じる眼球運動が、頭の回転を打ち消す方向に生じ、外界に対し眼球が静止した位置に止まろうします。(緩徐相)頭の回転運動が十分強ければ、逆方向への急速な眼球運動(急速相)が起こり、水平性眼振を生じます。
前庭反射では、片側の外耳道に温水または冷水を注ぎ、しばらくすると眼振が起こります。これは半規管内の内リンパが部位によって温度が違うため、内リンパに対流が生じるからで、これを温度性眼振といいます。実際の検査では、頭を仰向きあるいはうつ向きで水平に保ち、外側半規管が垂直面内に置かれた状態で行います。
ここで感覚受容器の前庭器官と運動効果器の外眼筋の構造を説明します。身体の平衡感覚に関係する部分は前庭器官と呼ばれ、球形嚢・卵形嚢・半規管から成ります。球形嚢と卵形嚢は骨迷路の前庭の中、半規管は骨半規管の中にあって、これら膜迷路の内腔は内リンパで、また膜迷路と骨迷路の間の間隙は、外リンパで満たされています。この中で、反射に関わる半規管について詳しく説明します。
半規管は、前半規管・外側半規管・後半規管の三つから成り、半環状の管で互いに直行する平面内にあります。外側半規管は水平面内にあり、前・後半規管は前額面と45°の傾きでそれぞれ前方・後方を向いた垂直面にあります。各半規管には膨大部脚と膨大部を持たない脚があり、両端は卵形嚢に開いています。前・後半規管の膨大部を持たない脚は融合して一本の総脚になっています。膨大部脚の根本には膨大部があり、その内壁は顕著な隆起を成し膨大部稜と言います。この部分の有毛細胞の毛は長く、上皮の表面を覆う膠質の中に入り込んでいます。この膠質は穂先の形をしてクプラと呼ばれます。
半規管は、頭の回転を感じるところです。頭が回転すると内リンパの慣性のためにリンパは回転方向と逆の方向に流れ、クプラはリンパの流れの方向に曲げられます。これによって有毛細胞が興奮し、前庭神経が興奮して前庭動眼反射が起こります。
眼球運動をつかさどるのは、六つの外眼筋です。水平方向の回転は内側直筋と外側直筋、垂直方向は上方への回転は上直筋と下斜筋、下方への回転は下直筋と上斜筋の協調によります。頭が揺れるにもかかわらず、対象に対して眼球を安定に保とうとする眼球運動は、前庭動眼反射によるこの六つの外眼筋の協調で調節されています。さらに注視する物体の像が常に中心かに結ばれるように視軸が調節されます。外側直筋は外転神経、上斜筋は滑車神経、その他の内側直筋・上直筋・下直筋・下斜筋は動眼神経支配です。
脳幹反射の中で前庭器官が関与する反射は、眼球頭反射と前庭反射の二つがあります。この二つの反射の特徴は、前庭器官への刺激が、眼球の運動に現れることです。
眼球頭反射は、正常では頭を右に回すと眼球は左に動きます。脳死の状態では、頭を回すと眼球もそのまま動いてしまいます。
前庭反射は、片側の外耳道に冷水を注ぐと、刺激の方向にゆっくり眼球が動きます。
そこでまず、感覚受容器の前庭器官と運動効果器の外眼筋の構造を説明します。
前庭器官の平衡感覚に関係する部分は半規管・卵形嚢・球形嚢から成り、これらの内腔は内リンパで満たされています。
半規管は、前半規管・外側半規管・後半規管の三つから成ります。
半規管の膨大部、この部分を拡大すると、この膨大部稜に有毛細胞があり、その感覚毛は長く、上皮の表面を覆う膠質の中に入り込んでいてクプラと呼ばれます。頭が回転すると内リンパの慣性のためにリンパは回転方向と逆の方向に流れ、クプラはリンパの流れの方向に曲げられます。これによって有毛細胞が刺激され、前庭神経が興奮して前庭動眼反射が起こります。
外眼筋は眼球運動をつかさどり、上、下、内、外の四つの直筋と滑車を通る上斜筋、下斜筋からなります。頭が揺れて物体の像がずれると、左右の外眼筋が共同して調節しています。外側直筋は外転神経、上斜筋は滑車神経、その他はみな動眼神経支配です。
c.咽頭反射・咳反射
咽頭反射
<咽頭反射の検査方法>
吸引用カテーテルで咽頭後壁を刺激する。咽頭筋が収縮して、吐き出すような運動が起これば、反射あり。脳幹に障害があればこの反射は消失する(脳死においては消失する)。
吸引用カテーテルで咽頭後壁へ与えられた刺激は、咽頭の知覚与る舌咽神経を伝わって上行する。咽頭筋は、迷走神経によって支配される。咽頭筋の外層筋である咽頭収縮筋には 上・中・下の3つが ある。先ほどの刺激によって、咽頭の後壁を挙上するような指令が、迷走神経を伝わって下行し吐き出すような動作をおこし、嘔気(オウキ)をもよおす。
神経路
咽頭後壁を刺激すると、そこから求心性のインパルスが舌咽神経の求心性ニューロンを通り、延髄に在る弧束核へと伝わる。弧束核では求心性インパルスが、内臓求心線維終止核である交連核に達し、そこで介在ニューロンを経て疑核のSVE核へと伝わる。SVE核からは遠心性のインパルスが、舌咽神経と迷走神経の遠心性ニューロンを通り、咽頭反射が起こる。
咳反射
<咳反射の検査方法>
気管内吸引用カテーテルで気管を刺激して、反射をみる。この検査は気管内吸引時に行い、脳死では消失する。
咳というのは、肺の中の吸気が気道を通じて有声爆発的に流れ出る状態である。深吸入相・声門が閉鎖する圧縮相・及び声門が解放する呼出相の3段階の時期からなる。気管に分布する神経は、反回神経からの下喉頭神経である。下喉頭神経の知覚線維が、気管の知覚に与る。さきほどのカテーテルによる刺激は、この知覚線維を伝わって上行する。刺激によって、延髄の咳中枢から遠心性神経である迷走神経・横隔神経・脊髄神経を伝わって声門の閉鎖・呼気筋群の収縮が起こり咳反射がおこる。
神経路
気管を刺激すると、そこから求心性のインパルスが下喉頭神経→反回神経→迷走神経の求心性ニューロンを通り、弧束核の背側呼吸核へと伝わる。ここでは咽頭反射のときと同様にして求心性インパルスが疑核へと伝わり、遠心性のインパルスが迷走神経の遠心性ニューロンを通り、咳反射が起こる。
―――終わり
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